2005年09月24日

速攻!北鎌尾根 その2

いよいよ北鎌に挑む日だ。気合を入れて、3時ジャストにヘッ電で出発した。

持ち物は絞り込んだ。
食料は行動食と、万が一のビバークに備えた+α程度。予備のウェアはこれもビバークに耐えられる程度に薄手のフリースとダウンジャケット、手袋、雨具。あとは地図、コンパスとクライミング道具だ。
クライミング道具は進退窮まったときに懸垂ができることと、必要とあればリードクライミング時に大岩などでもビレイが取れるように、8.6mm×45mロープ、ダブルサイズのスリング4本、カラビナを環つきとあわせて6個、ビレイ/ラペル器具、ハーネス、ヘルメットとした。(ただ、ちょっと過剰装備だったかなと思う。特にロープ)
水は北鎌沢で汲める可能性が高かったが、どうせ稜線には持って上がらねばならないわけだから、初めから2リットル持っていくことにした。そのほうが安心だ。
シューズは登山靴ではなく、ごましおさんはサロモンのトレイルランニングシューズ、僕はスポルティバのアプローチシューズを使用した。天気は上々だ。上弦前の月が明るく輝き、月明かりでおおよそ周りの地形はわかる。気温も、涼しいが寒過ぎない程度だ。

水俣乗越への分岐は容易に分かり、さくさくと歩いて4時には水俣乗越に到着した。なかなかよいペースだ。さあ、一般ルートはここまで。
水俣乗越への登山道で、一箇所気をつけなければならないところがあった。一度登山道が乗越沢に合流するのだが、ちょっと進んでまた沢と分かれて左のほうにそれていくのだが、この部分の赤布を見落とさないように。

水俣乗越からの下りは、予想以上に「道」ができていた。出だしこそ、ザレザレのいやらしい下りだったものの、すぐに右の草つきをつづら折れながら下る踏み跡になり、そのうち樹林帯の中の道になった。斜度は急だが、潅木を引っつかみながら下りれるので危険は感じない。やがて、1つ右手の小沢にぶつかるところで踏み跡は途切れ、あとは北鎌沢出会いまで、水の涸れた沢沿いに歩くだけだ。斜度はないが、全面浮石みたいな川原で、結構気を使った。
この時期、雪渓はまったくなかった。僕らのシューズでは、雪渓はちと厳しいなあと思っていたので助かった。

北鎌沢出会いには5:30に到着した。ちょうど夜が明けてヘッドランプなしでも歩けるようになるタイミングで到着。理想的なタイミングである。今日、北鎌を狙うパーティは結構いるようだ。天上沢の下降途中で、幕営中のパーティが1組おり、沢の出会いで15分ほど休憩している間に2組3名が沢に入っていった。また、後ろからも2名来ていたし、下降中に北鎌のコルでもヘッドランプの明かりが動いているのが見えていた。
北鎌沢は話には聞いていたが、コルまで見事に一直線に突き上げている。
今回、直前が忙しくてルートに関する情報をあまり収集する時間がなかった。調べてきたことといえば、「北鎌沢のツメは右に入れ」「独標は右から巻いて、途中から登れ」「尾根上は迷ったら直登」ということくらいである。この沢のツメで迷った話は結構聞いていたので、警戒していたが、下から見る限りかなりルートは一目瞭然だ。さあ、スタートラインへの最後の関門、北鎌沢を登ろう。

登り始めて初めてまもなく、左又との分岐についた。左又方向で水音がしていたので、少し登って念のため、水を若干追加。

何年か前に友人のBさんCさんコンビはここで左又に入ってしまったらしい。「ここ間違えるか〜」と突っ込みを入れつつ、先に進む。

まもなく、先行していた3人に追いつき、一緒に登るような状態になった。

kitakamasawa1.jpg
北鎌沢は特に難しいところはなかった。斜度は急だが、普段沢登りなどをやっている人なら、やさしい登りだろう。
ナビゲーション的にも、下から見た「一直線に突き上げて」「最後にくいっと右に曲がってコルに出る」イメージがあれば、まず大丈夫だろう。ここで迷う人は、考えすぎじゃあ…?
kitakamasawa2.jpg
後ろを振り返ると、朝もやが天上沢をうめて雲海のようになり、日の光を受けて白く輝いていた。
kitakamasawa3.jpg
この部分が「最後に右に入る」ところ。ツメの部分は草つきの登攀となり、まもなくコルに到着した。

コルは、テントが2張りほど張れそうな平地だ。天気もよくあたりは気持ちの良い草原で、北鎌尾根にいることを忘れるような憩える空間だった。

コルから先は、かなりの急登だ。ただ、樹林帯の中で踏み跡も明瞭で、難易度はちょっと悪い登山道程度だった。危ないところも、木の根を引っつかんで登ることができる。
IMGP2465.JPG
2つほど、明瞭なピークを越えると、ちょっと斜度が緩み(このあたりを天狗の腰掛けというらしい)、前方に独標が立ちはだかっていた。北鎌前半の山場だと思っていたので、気を引き締める。
IMGP2467.JPG
近づいて観察すると、千丈沢側を巻く道が確認できた。ただ、中央部のガレていそうなあたりが、かなりイヤな感じに見える。
この部分は、近づいてみると良く踏まれていてなんてことはなく、そのまましばらく巻いた後、斜度が緩んだところで直登することにした。
IMGP2468.JPG
この登りは、ルートはそれほど明瞭ではなく、とにかくやさしそうなところを拾いながら登っていった。一度、垂直のコーナー状のところで行き詰まり、ロープを出そうかと思ったがちょっと思い直して少し戻ってみたら、容易に登れるルートが見つかった。基本的に、ロープが必要と思うほどのところが出てきたら、ルートを誤っている可能性が高いと思う。

IMGP2469.JPG
9:15 独標のピーク到着
ここまで天気よく来ていたが、このあたりで穂先方面にガスがかかり始めた。ちょっとの差で独標からの写真に穂先を入れることができなかった。残念。

IMGP2472.JPG
この先は、斜度自体はきつくないものの、いくつものピークを越える、すべて岩稜帯の気の抜けないルートとなる。
さて、先に「尾根上は迷ったら直登」というアドバイスを受けていたことは書いた。
が、P14(位置は正確でないかも)手前あたりで、どちらにすべきか迷い、その場ではやさしそうに見えた千丈沢側の巻き道に入ってしまった。
これが失敗だった。巻き道はなかなか稜線に戻らない。
次の尾根を越えたら…と考えては進んでみるものの、稜線との距離は縮まらず、道はだんだん悪くなってきた。
完全なハンドトラバースの場所や、下降するため残置のボルトにかかったシュリンゲに頼らざるを得ない場所など、かなりヤバいところもあった。考えてみれば、直登ルートは始めの登りさえこなせば後は稜線歩きなわけだが、トラバースは同じ距離ずっと悪い場所を行かなければ行けないわけで…

結局、P15も大きく巻いて、北鎌平の手前の部分にだいぶ上り返すハメになった。この部分で時間をだいぶロスし、精神的にも疲れることとなった。
巻き道の微妙なトラバース箇所で、一度左手で持っていたホールドががっぽり抜けた時は肝を冷やした。テスティングした時は動きそうにはなかったのだが、それをつかんで、右手で別のホールドを取った直後だったに抜け落ちたのであった。危なぁ〜

IMGP2474.JPG
上り返しの後、今度はしっかり稜線伝いに小さな岩峰を2つ越えると、北鎌平だった。
いたるところに残るビバークの跡、大岩にはめ込まれた遭難碑。
ここでは、いろんなドラマがあったんだろうな。
そういえば、会の先輩も強風で穂先に登れずここでビバークしたことがあったって言ってたっけ。

北鎌平からだと大槍はかなり急峻な壁に見えたが、近づいてみるとしっかりとした大岩が重なり合ったような構造で、ホールド、スタンスとも豊富。高度感にビビらなけらば、登り自体は容易だ。
しかも、なんとペンキマークがあるではないか。ちょっと興ざめ。
ただ、このマークは必ずしも登りやすいところにはついていない。適当に自分にとって容易と思われるところを選択して登ったが問題はなかった。

IMGP2477.JPG
穂先登りの名所、チムニー登り。これは下のチムニー

IMGP2480.JPG
こっちは上のチムニー。上のチムニーのほうがちょっとだけ悪い。

今回僕らは軽装のため、チムニーにもすっぽり入ることができ、問題なくロープなしでいけた。荷物が大きいとここはちょっと大変かな。

どこが山頂だか良くわからないまま登っていくと、3メートルほど上に、普通の格好をしたおじさんがいた。あれ?
「そこ、山頂なんですか?」「はい、そうですが。」相手にとってはなんとも間抜けな質問であっただろう。
でも、僕らにとっては大きな答えだ。あと、3メートルだ。

IMGP2481.JPG
12:15 充実感に包まれながら、本当に祠の真裏に飛び出した。ごましおさんとがっちり握手。
ロープは、結局お守りのまま終わった。

楽しみにしていた?観衆の反応は拍手や歓声ではなく「キョトン?」「祠の前で写真撮影の順番待ちで並んでいたのに、この人らどこから沸いてきたんだ?」という感じであった(笑)。

山荘への下りは、渋滞でかなり時間がかかった。まあ、もう急ぐこともない。ごましおさんは、足元のおぼつかない登山者に、三点指示のアドバイスまでしていた。
どうしても生ビールが飲みたいとごましおさんが言うので、山荘で大休止とした。ここまでくれば、完全に安全だ。

あとは、ババ平に戻るだけ。疲れてはいるが、足取りは軽かった。槍沢はうっすらと紅葉が色づき始めていた。

テントには15:00到着。大満足の山行であった。

今回のルート

天候:晴れのち曇りのち小雨
ババ平テン場(3:00)----水俣乗越(4:00)----北鎌沢出合(5:32)----北鎌沢コル
(7:15)----独標のピーク(9:15)----北鎌平(11:25)----槍ヶ岳(12:15)----バ
バ平テン場(14:57)






posted by S.A at 18:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 登山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんか最近、バリエーションルートばかり行ってない?たのしそ〜。僕も来年あたり沢にチャレンジしてみようと思ってます。その時にはいろいろ教えてね。

11月の下旬、立山へ積もりたてほやほやの新雪を頂きにいくつもりです。早く雪を見て安心したいものです。
Posted by にしかわ at 2005年09月29日 18:15
沢、絶対面白いよ。にしかわ夫妻なら、すぐ適応できるはず。来年、ぜひ一緒に行きたいね。

11月立山〜?いいな〜
日程決まったら、声かけてね。
Posted by S.A at 2005年09月30日 12:31
現在迄の山行

剣岳 早月尾根ルート
奥穂 白出沢ルート

北鎌尾根より槍まで単独で登るためには
個人で知識を得ただけでは登れませんか

アドバイスください





Posted by 橋本裕史 at 2006年03月20日 11:18
橋本さんの技量を存じていないので、確実なアドバイスは難しいのですが…

北鎌尾根の最低限必要な技術的難易度はそれほど高いとは思いません。クライミング的に難しいのは独標越えと槍の穂先登りくらい。それも、5.8くらいのルートを安全確実に登る力があれば、ロープはほぼ不要でしょう。ほとんどは普通の尾根歩きです。
ただ、これはルートファインディングのミスがなく順調に行った場合の話。私たちも含め、何らかのルートミスをしている人は多いです。

難しいところに入り込んでしまったとき、撤退するための技術は必要だと思います。これにはある程度のロープワークが必要です。

もうひとつ、一番重要なのはあくまで早月や白出沢ルートは一般道ですが、このルートはバリエーションルートだということです。もちろん道標はありませんし、地図を見て道のないルートを歩いた経験が少ないのでしたら、もう少し難易度の低いところで練習をしたほうが良いかもしれません。

あとは体力ですね。1日で抜けるにはそれなりの体力は必要です。一般的には、北鎌のコルや、北鎌沢出会い付近で一泊する人が多いみたいですよ。
Posted by 野遊び人 at 2006年03月21日 15:15
アドバイス、有難うございました。

山岳クラブ等に入会し、活動する時間的な余裕が
ないのですが、「ロープワーク」について個人的にある程度マスターすることは可能でしょうか。
(年齢51歳)

Posted by 橋本裕史 at 2006年03月24日 23:01
ご返事遅くなりました。

特に山岳会に所属しないと習得できないというものではありません。
ただ、経験者について学ぶのがよく、完全な独学は危険だと思います。
アウトドアショップやクライミングジム、または個人の山岳ガイドなどが、各地で講習会などを開いていますので、それを利用するのが一番良いのではないでしょうか。
Posted by 野遊び人 at 2006年04月02日 21:04
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