まずは1段目の滝丸々、50mのユマーリングだ。

昨日Fixしたロープは、暗闇の中だったため場所を選べず、空中ユマーリングの長いかなり厳しいところにかかっていた。ユマーリングにそれほどなれていない僕らのために、Clifさんがいったん登って、少し場所を変えて、ロープを架け替えた。
アッセンダーはハンドルつきのものが、3つ、ロープマンが2つ、ミニトラクションがひとつという状況だったので、各自ハンドルつきセンダーとロープマンorミニトラクションひとつでのユマーリングとなった。
僕はいつもこのシステムで登っているので大丈夫だったが、ひなこさんはこの1本目のユマーリングでかなり疲労困憊してしまったようだった。

そこで、1本目を上りつつ考案したペツルのクロールを真似した簡易チェストセンダーのシステムを2本目のユマーリングでテスト。さらにロープマンより動かしやすいミニトラクションを使ってもらい、2本目のユマーリングは非常にスムーズにこなしてくれた。昨日の到達点に無事到着。
この先も、木こそ生えているがもろそうな岩と、強い傾斜のいやらしそうなピッチである。「リードする?」といわれたが、行きます、とは言えず結局引き続きClifさんにトップで行ってもらう事になった。
この算盤ルンゼに関していえば、正直なところ完全に自分の実力を超えていた。もろい岩と、プアなプロテクション、落石の恐怖。ここをトップで登る技術も、勇気もまだ足りない。
前二人が登る間、また大きな落石が2つ3つそばを通っていった(落とさざるをえなくて、当たらないように落としたものだが)、この部分は、ホールドも、立ち木でさえもいまいち頼りなく、信頼できるものはロープのみであった。トップで登るのはさぞ恐ろしいことだろう。

下降路の途中で見つけた落石を食らったと思われる木。こんなのに当たったらひとたまりもない。
このピッチ終了後、少し滝身から離れたので、次のピッチは滝の方向に向かってトラバースした。すると3段目の滝の基部のちょっと上と思われるところに出た。

この3段目の滝を登れば、おそらく算盤ルンゼは終わりだろう。しかし、この滝も前の2段以上に長く、傾斜もきつく、最上部はまるで覆い被さってくるかのような迫力だ。
しかし、ここに来てなんと岩に残置のボルトとハーケンを発見。まだこの上まで行っている人がいる!
Clifさんが残置のボルトとハーケンを使ってエイドで登り始めたが、ハーケンがポッキリ折れてフォール。ビレイやーのひなこさんも吹っ飛ばされてビレイ点の立ち木の上部につけた支点に宙ぶらりんになった。
幸い、傾斜が強いところだったため、Clifさんも無傷で済んだが、リングボルトがあわせて飛んでいたら、岩にたたきつけられていただろう。

結局ここはフリーのほうが良いだろうと、再トライ。出だしのハンドトラバースはかなり恐ろしそうであったが、無事に越えていった。この部分、フォローの2人は、フォローの気楽さもあって、ヒールフックからの豪快なムーブで越えた。
その上は少し階段状となり、その後シンクラックのエイド、エイドの後は少し滝身から離れて藪の中のモンキークライムと続く。サードの僕はエイド支点を回収したらまったく登るすべがなくなった。ハーケンを打ったら本末転倒なので、スモールナッツをかまして越えようとしたが、3つ目くらいの支点で極小サイズのストッパーもまともに入らなくなりフォール、やむなくユマーリングで越えることにした。
さて、後はゴールまで後わずかである。
で、あるが当初設定した撤退時間はすでに超えていた。
しかも、今までで一番厳しいピッチになるかもしれない。ただ、ここまで来ての撤退は、もったいなく、かといって再訪するのも正直気の進まない壁であった。そこで、行ってみることにした。

はじめは、滝身を左方向にトラバースして、その後右上する。この部分、プロテクションがまったく取れず、見ていてもひやひやした。
Clifさんがこの上で、残置のボルトを発見と伝えてくる。そうか、未登ではなかったのか…
しかし、ボルトはやがて途切れた。どうやら崩壊した岩とともになくなってしまったようだ。この先を進むにはボルト連打しか手はない状況となり、再び相談。結局そこまですることはないだろう、ということで撤退を決めた。
ゴールは目前であったが、突っ込んでいたら、ビバークになったのは間違いない。
それに、今までに感じたことがないほど「イヤな感じ」が頭から離れない状態になっていたため、ここで退いたのは正直正解だったと思っている。
今日の神経をすり減らす登攀でClifさんはかなり疲れていたのだろう、下降路は僕がルート工作をしていった。確かにこのルートは下降路もロープぎりぎりいっぱいの懸垂に、ヤブとの格闘と決して楽ではない。
2ピッチで登った2段目の滝の下降がポイントであったが途中まで下降して、ロープをほぐして下ろしたところ、何とか下まで届いているようであったので、一気に降りた。これもぎりぎりであった。

ちょうど夕日を浴びながらの下降であった。
最後にちょっとヘッ電のお世話になり、19:30、無事下界に戻れた。
今まで、ヘンなところばかり登ってきたが、登っているあいだいつも「イヤな感じ」がはなれず、ここまで怖い壁は初めてだった。
再訪したいかといわれたら…Noだなあ。
Clifさんによるレポートはこちら
強いて考えれば夜間行動、ビバーグぐらいしか思いつかない。この前の池郷の方がイヤな感じがした、水は苦手だな。写真頂きます、myブログにUP予定。
今回の算段ルンゼレポート、読ませていただきました。
結果としては今回登った所、あるいはそれ以上まで登った人がいたのは残念だけど、探せばまだまだ「初完登!」の栄誉は意外と身近に転がっているのだなと、山遊びの楽しみを再燃させられました。(笑)
とはいえ、トライアルでやっちゃった腰と足の痛みと痺れを引きずっており、10kmのランニングが出来なくなってしまった、そしてそれ以来持久系遊びをぱったりやめてしまった私にとって、徒歩山の再開はちょっと厳しい・・・。
ですんで、S.A氏のレポートで行った気分を味あわせてもらいます。
これからも今回みたいな曲者でドキドキなレポート、楽しみにしてます!
P.S
もちろん持久系遊びも完全にやめたとは思ってないっす。
時が来たらいつでも戻れるように、機材だけは常に手入れします。
またゆる〜い企画があるようなら、誘ってくださいまし。
浮石が多いので大変ですね。
やっぱり落石かなあ。すぐそばを何発か通って行ったし、ロープに直撃しかけたし、
特に最後の2ピッチで頭上にいかにももろそうな岩が覆いかぶさるように積み重なっているのが見えていたし…
トライアルで腰痛めたって聞いていたけど、結構重症だったんですね…
この年になると、逆に瞬発系の遊びに手を出すのは怖い気分ですね。持久系のほうが、長く遊べるかなあと。
34年前!すごいですね。
当然、カムなんて便利なもののない時代でしょう。
算盤ルンゼって情報がないなあと思っていましたが、ネットで公開してみるものですね。
やっぱりあの3段目の上が、ゴールだったんでしょうか?
凄くトライされて羨ましい限りです。
昔は登る方も多かったようで、しっかりした残置ハーケンが、あったので、楽でしたよ、靴は登山靴ですが
上に抜けてライオンの鼻へ登りに行きましたが、古い事で、詳しくは・・・・。