地形図上で見てみると、遡行対象になりそうなゴルジュ部分の長さは500mに満たない。この間で稼ぐ高度は実に250mもある。谷全体が滝となっていることが予想できるではないか。
この沢に、沢雪山歩のBAKUさん、くりさん、のーきょーさん、まーさんとの5名で、行くことになった。
入渓は8:30過ぎ。中奥川との出合いはややわかりにくい。右から大きな沢が流入する中奥川の屈曲点までいったら行きすぎ。堰堤のちょっと手前というのが目印だ。

まずは小滝をいくつかこなす。湿度が高く岩のフリクションはあまり良くない。BAKUさんによると水量も、以前来た時よりも多めとのこと。

細長い淵でひと泳ぎ

すると前方に最初の大滝20mだ。これはちょっと手が出ないので、右岸を巻くことにする。落ち口にトラバースする小さく巻くルートを選択したが、両岸ともかなり立っているため、巻きも結構微妙だ。

谷に戻るとすぐに、目の前には次の大滝、小さな釜をもった15mだ。
ここは、左岸側のリッジにルートをとることが多いようだが、水線際のクラックがおいでおいでをしている(^^;
もともと、一つくらいは滝で遊んでやろうとカム、ナッツも3つづつ持ってきたので、ここはトライさせてもらうことにする。
下部はホールド、スタンスともに豊富だ。プロテクションをとるクラックも困らず快適なクライミングだ。
しかし上段部分が結構渋い。ハーケンを1本打って、クラックに足をねじ込んで高度を上げるが、落ち口の数歩がなかなか出せない。最後は、全身フリクションを利かせながら左手のテラスに何とかトラバースし、登りきった。使ったギアはカム2本と、ハーケン1本であった。

後続メンバーははじめ登高器具で登ってもらうが、落ちるときは結構派手に落ちそうなので、上からのビレイに切り替えて、全員突破した。
しかし、ここでうっかり結び目の残ったロープを下に投げてしまい、途中で引っ掛かって難儀した。極めて基本的なミスで、大いに反省である。
次のチョックストーンは、のーきょーさんを踏み台に(笑)、先頭が突破し、上からあぶみをたらして突破した。

その先はこれまた見事なトユ状の長い滝だ。落ちるとかなり痛そうなウォータースライダーだが、ステミングで容易に登れて楽しい。ただ、最後の部分だけは、かなり斜度があり、右岸から小さく巻いて逃げた。
トユ状連瀑を超えると、その先は広い空間になっている。右手の枝谷からすだれ状の大滝、左手は、本流からの直瀑が流れ込み、いずれも30〜40mくらいあるだろうか、素晴らしい眺めだ。おそらく、地形図上の二股地点だろう。

周囲はどこももかなり切り立っているが、左手の中段のテラス部分から延びるルンゼが比較的容易に見える。そこで、右手からテラスを伝って、滝の裏を通るルートを選択する。滝の裏を通ることなんてなかなかなく、新鮮であった。もっとも、裏といってもほとんど滝中であり、ずぶぬれであったが。

この沢はホントに息つく暇もない。巻き終わるとすぐに目の前には3段40mが立ちふさがった。最上段の直瀑から、二条に分かれて斜瀑となり、下段部分は二条に分かれて、釜で再び流れを一つにする。見事。
下部2段は容易に登れる。2段目を登ったところのテラスが日も当たり眺めもよく快適なところで、小休止ののち、上段を巻いた、これまた結構微妙なところもあった。
ここを超えると、遡行としてはほぼ終了。廊下状の空間の頭上をつり橋が越えており、その先に右手から本流の直瀑が落ちている。

最後の滝の…中で(笑)ワンショット
この滝は、つきあたりのルンゼを登り、右手に巻きあがって滝上に出たが、ツメはほとんど垂直の木登り状態(のーきょーさん曰く、4級の木登りとか(^^;)。最後まで気を抜かせてくれない谷であった。
気を抜かせてくれないのは下山もしかり。つり橋を渡って、そま道をたどると間もなく、道が崩壊している(^^;
なんとかトラバースして超えると、今度は今にも崩れそうな長い腐ったはしごだ。ここは懸垂で下りたが、間もなく道も消滅。最後は地図上で斜度が緩そうな東へ東へ逃げつつ、何とか15時前に中奥川の河原までたどり着いた。
戸倉谷は、アプローチも容易で、短い中に沢の厳しさ、楽しさをギュッと凝縮している。何より、一つ一つの滝の造形が見事だ。
ただ、渋い巻きも多く、ビギナーにはかなり厳しいかもしれない。

おまけ。下山中に遭遇したマムシ君。そんなに近づいて撮るなって?
楽しい遡行でした(^・^)
またご一緒しましょう。